2月1日に、大阪・中之島の中央公会堂で開催された、「大阪私学保護者の集い~橋下知事と大阪私学を語る会~」に、保護者の一人として参加してきました。
例年は、「大阪私学振興大会」という名前で、「大阪私立中学校高等学校保護者会連合会」の主催、「大阪私立中学校高等学校連合会」の協賛で行われている会ですが、民間団体の会合には「公平に一切顔を出さないことに決めている」という橋下知事が、「保護者と学校関係者との意見交換会という形なら出てもいい」ということで、急遽、趣旨を変更しての集いとなった、という経緯がありました。
府知事・府議会側と学校関係者とのパネルトークと、保護者・私学関係者からの質問&橋下知事からの回答で、約1時間半。
まあ、橋下知事は、TVで見ているのと同じで、よくしゃべることしゃべること…(笑) 司会・進行役が「あのー、私が話を振るまで待っていただけませんか(苦笑)」とあわてるくらい、最後は、帰宅を急ぐお母さんたちに向かって、ワイヤレス・マイクを握って舞台前方へ出てきて「よろしくお願いします」と頭を下げるなど、終始、ご自分で仕切ってしゃべってましたね。
ざっくりと、橋下知事の主張をまとめれば、「私学憎しで、補助金を削るわけではない。府が借金だらけなので、医療補助なども含めて、いろんなところを削ったその一貫として、学校関係も削らざるをえなかっただけなので、“私学の敵・橋下”と思わないで欲しい」ということと、「府下の高校を、公立・私立を同じ土俵に立たせて競争させ、サービスの悪い学校は、公立であれ私立であれ、淘汰されて潰れてもいいと思っている」ということでした。
また、学費の助成に関しては、「基本的な授業に対しての補助は行いたいが、各私立学校で独自の活動(贅沢な…とは表現しませんでしたが、修学旅行やその他の課外活動など)に関しては、税金を突っ込むことはできないので、それはその学校を選んだ親が負担すべきだと思う」ということを、繰り返し言っておられました。
あと、「高い役員報酬支払ってる学校には助成しない」こととか。
それから、「高校授業料無償化」に関しては、「皆さんが選挙で投票した民主党政権が、“不徴収”にすると、法律作って決めちゃったんで、ボクは、年5万円くらいはいただきたいと思ったんだけど、『取っちゃいけない』という法律ができちゃったんで、取れないんですよねえ」と、民主党政権に不満たらたらでした(苦笑)
――いや、あなた、民主党の応援で知事になったんじゃないの?と、思わず、隣のお母さんとツッコミ入れてしまいましたが…。
それにしても、「不徴収」の法律ができるなんて話、知りませんでした。
※「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/06030110/1289727.htm
ただ、橋下知事の話を聴いていると、どうも、「バウチャー制度」について、無理解というか誤解をしておられるようなので、その点で、学校関係者との話が噛み合っていませんでした。
教育費を「バウチャー(クーポン券)」方式で、学校に直接助成金を配るのではなく、子供たち一人ひとりに配れば、公私間の不公平感も無くなるし、「公私が同じ土俵で自由競争する」という環境も整えられると思うのですけどね?
つまりは、学校の人気投票も兼ねて、「良い学校」にはバウチャーが集まり、公費の助成金が厚く配分されることになるのですから。
もう一つ、知事の抱いている公立と私立のイメージが、ひと昔前のものではないか、と以前から感じていたのですが、今回の話を聴いていても、やはりそうらしい、と思わざるを得ませんでした。
ちなみに、ご自分の7人のお子さんたちには、“高校浪人”させてでも、絶対に公立高校へ進学させるそうですが――。
なんというか、「公立高校は、子供が頑張って勉強して、その努力が、入試というフィルターを通して、結果として出たら入れるところで、私立は、公立で振るい落とされた子供で、親に経済的余裕があれば選んで行けるところ」というイメージみたいなんですよね。
だから、「勉強で結果が出せなくて公立に入学できず、まあ、お金があるから私立へ、自己責任で入学したんでしょ? それを入学してから、『公立行かせてる家庭と平等な金銭負担にしてほしい』と言うのは、ムシが良過ぎるんではないのか?」というニュアンスなのですよ。
加えて、橋下知事が「分かってない」と思うのは、大阪の公立中学校の「教育力の低さ」です。いじめや暴力沙汰などで荒れている、とか荒れてないとかいうこと以前の問題――公立中学に通っているだけでは「まともな高校へ進学できるだけの学力」が身につかないという、学校の存在価値そのものに関わる問題があることを、橋下知事は認識できていないと感じるのです。
だから、「親が好きで選んで私立高校へ行かせている」のではなく、「まともな教育をしてくれる公立中学校が無いから、中学から私立へ行かせる。そして、そのまま、私立高校に通うことになっている」というのが、今の大阪府下の子供たちの状況だと思うのです。
もし、地元の公立中学校へ子供が進学したら、私立中学へ通うのと同じかそれ以上の教育費をかけて、学校外の塾や家庭教師の世話にならなければ、上位層の公立高校へは合格できない――というか、教育費がかけられる家庭がそうするようになってきているので、塾に通わず、公立中学へ通って自学自習するだけでは、その「競争」に負けてしまうのが現実……では?
◆中3の塾代など学校外活動費、過去最高の年40万円
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100128-OYT8T00369.htm
〔読売新聞 2010年1月28日〕
公立中学の3年生を持つ家庭が2008年度、学習塾や習い事などに支出した1人当たりの「学校外活動費」は、過去最高の約40万円に上ることが、文部科学省の「子どもの学習費調査」でわかった。
うち8割は塾代や家庭教師代が占めており、高校入試に備えた支出とみられ、中学生を持つ家庭の教育費負担の重さが浮き彫りになった。
(略)
放送大学の小川正人教授(教育行政)の話「学校外活動費が中学で伸びているのは、高校進学を人生の岐路と考えている人がまだまだいるため。ただ、学用品代などが払えず自治体から援助を受けている家庭が多いことを踏まえると、教育費の平均を押し上げているのは富裕層だと考えられる。低所得者の教育費にさらなる対策が必要だ」
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