二条河原落書

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「宇和島徳洲会病院 臓器売買事件について」


各メディアが、いろいろと報じてはいますが、まとまった情報がなかなかありません。
「臓器移植」問題については、読売オンラインが、比較的古い情報も残しておいてくれているし、何か起きた場合には、継続的に報道しているように思います。

腎臓提供者に金品、移植患者ら逮捕…愛媛県警
 〔読売オンライン 関西発 2006年10月02日〕
 愛媛県宇和島市の「宇和島徳洲会病院」(貞島博通院長)で昨年9月に行われた生体腎移植手術をめぐり、患者らが臓器提供の見返りに現金30万円と乗用車(150万円相当)を女性ドナー(臓器提供者)に渡したとして、県警は1日、患者で水産会社役員山下鈴夫(59)(同市中沢町1)と、内縁関係で、臓器売買を仲介した同社社長松下知子(59)(同)の両容疑者を臓器移植法違反(売買の禁止)の疑いで逮捕。同病院や両容疑者の自宅など関係先計3か所を捜索、カルテなどを押収した。県警は同日、特別捜査本部を宇和島署に設置し、松山市内で貸しビル業を営むドナーの女性(59)(入院中)からも立件を視野に同法違反容疑で事情を聞くとともに、病院側が臓器売買について認識していたかなどを調べる。1997年の同法施行以来、臓器売買での摘発は全国で初めて。



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 松下容疑者はこの女性とは約25年前から知り合いで、女性から200万円を借りていた。松下容疑者は昨年8月ごろから「ドナーになってくれたら、借りた金に300万円を上乗せして返す。うちの人を助けたい」などと再三、頼み込み、承諾を取り付けたという。
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 女性が今年2月、県警本部を訪れ、「知人に腎臓移植のドナーになるよう頼まれ、手術を受けたが、これまで貸していたお金や約束のお金も渡してくれない」などと相談し、県警が内偵していた。
生体臓器移植の場合、臓器提供できるドナーに関しては、『日本移植学会の倫理指針』では、「親族に限定する。親族とは6親等以内の血族と3親等以内の姻族を指すものとする。 」と決められています。

●二人の容疑者とドナーの女性との関係

山下鈴夫容疑者(レシピエント)は、2~3年前から車椅子生活をするほど糖尿病の症状がかなり悪化しており、山下容疑者の息子や別の親族にも腎臓の提供を求めたようですが、結局、提供してくれる者がおらず、内縁の妻である松下知子容疑者も血液型が適合しなかったため、「知人の女性」を自分の妹と偽って担当医師に紹介し、ドナーとなってもらったとのこと。

この「知人女性」は、松下容疑者と、1980年ごろに、お互いの子どもを通じて知り合った人物らしいですが、96年頃から松下容疑者が金を借りはじめていたとか。山下容疑者は妻がドナー女性に借金をしていることは知らなかったようです

●山下・松下容疑者の評判
 病院側を「だました」形の山下、松下両容疑者は、市内のマンションに住み、水産会社を経営していた。

 市内のタクシー運転手(58)は山下容疑者を何回か乗せたことがある。「一時は羽振りが良くて、よく飲み歩いていた。態度や言葉が横柄で、乗せるのが嫌だった」

 市内の漁業関係者はこう首をかしげる。

 「逮捕された二人はよくパチンコに行っていたという話だけどね。そもそも二百万円を貸していたのに、その上、腎臓まで売るなんて、知人女性と二人は一体どういう関係だったのかねえ」
 〔東京新聞 2006年10月6日
糖尿病が悪化して、人工透析をしなければならなかったのならば、仕事を続けることは無理ですし、その介護をする妻も、働くわけにはいかなかったでしょう。

ドナーとなった女性が松下容疑者の熱心な依頼に、「情にほだされて」腎臓を提供したのだろう、という記事もありましたが、10年にもわたって金をせびられ、その上、腎臓まで提供してしまうなんて、なんというか、多少「支配-被支配関係」になっていたんじゃないかと感じるのですが・・・頼まれると「イヤ」と言えないような関係って、ありますよね。ちょっと「共依存」的な状態だったのかもしれません。

山下容疑者の術後の経過は良好だそうで、一方、ドナーの女性は、術後に胆石が見つかり手術。現在は別の病院に入院中だとのこと。〔産経Web 2006年10月2日


●宇和島徳洲会病院と万波(まんなみ)誠医師

宇和島徳洲会病院は、脳死や心臓停止後に提供される臓器をあっせんする「日本臓器移植ネットワーク」に加入していなかった。
 ※臓器移植ネットの腎臓移植の登録施設になるには、医師の執刀件数などを報告する義務
  があるほか、
    (1)生体腎移植を累計で5件以上
    (2)手術経験のある医師が2人以上
    (3)手術前後の24時間支援体制がある
  などの条件がある。
「移植ネット」に加入していないと、死体からの臓器提供が受けられない状態のまま、生体腎移植の実績を伸ばしていた、ということらしい。 〔東京新聞 2006年10月4日

宇和島徳洲会病院はネットに加入しない理由について「答えられない」としている(同上記事)。
さらに、宇和島徳洲会病院には、「倫理委員会」が設置されていないとのこと。

また、万波医師は、「日本移植学会」に所属していないが、「腎移植のカリスマ」と呼ばれるほど、生体腎移植の手術では実績のある医師だという。〔アサヒコム 2006年10月02日
上記産経Webの記事では、『600回以上の腎移植を手がけている』との情報も。

●困惑する関係団体

「日本移植者協議会(大阪市・大久保通方理事長)」や、「日本移植学会(田中紘一理事長)」は、臓器移植のイメージが悪くなることや、ルールが無視されていることに懸念を示しているようだ。〔東京新聞 2006年10月3日
「NPO法人東京腎臓病協議会(東腎協・榊原靖夫会長)」も、ショックを受けている。〔東京新聞 2006年10月4日

宇和島徳洲会病院と万波医師のケースが、上記のように「異例」であることが報道で強調されるのも、臓器移植のイメージ悪化を防ぐためではないかと思われるが・・・。

産経新聞の臓器移植関連の「ご意見番」である太田和夫氏の意見は下記の通り
 法律では臓器の売買を禁じており、それが守られなかったのなら残念。ただ、移植を行う病院は臓器提供者が承諾していれば手術を行う。戸籍などしらみつぶしに調べることはしないので、不可避な面もある。

 今回の事件で、移植医療全体に悪いイメージが増幅しないかが心配だ。背景には、提供される臓器が圧倒的に少ないという国際的にも恥ずかしい現状があり、そのことの方も問題とすべきだ。臓器移植医療への抑制因子となってはならない。

 限られた提供臓器のもとで、そこまでして臓器を得たいと思う患者がいても、不思議ではない。一つの事件として罰することで終わりにするのではなく、臓器提供の意思表示の数が増えるように取り組むことが必要だ。

 臓器提供はあくまで善意に基づかなければならないが、問題の根底には提供される臓器が極端に少ないことが挙げられる。死後に臓器提供をするという意思表示する人を増やすことが大切で、売買に頼らなくても臓器移植が可能な社会環境を整えることが重要だ。(談)
産経Web 2006/10/02


●現行の「臓器移植法」への疑問
「たとえ臓器提供条件を緩和しても、現状は変わらないだろう」

 医事評論家の水野肇氏はこんな見方をする。

 水野氏は九二年一月に「脳死を人の死とすることについて、おおむね社会的に受容され合意されている」との答申を出し、臓器移植に道を開いた「臨時脳死及び臓器移植調査会」(脳死臨調)の参与だった。

 「脳死臨調では百時間以上を議論に費やしたが、90%は臓器移植をやる、やらない、という入り口論に終始した。人の死とは何なのか、という立ち入った議論は置き去りにされた。提供者が増えないのは、根本問題をないがしろにしたツケだ。積み残しにした問題を再び問い返して、一日も早く臓器移植の立ち後れを取り戻さなければいけない」。〔東京新聞 2006年10月4日
とりあえず、ざっくりと既出情報をまとめただけで終わってしまいましたので、また「続編」をエントリーするかもしれません(^^)

 ※10/7日(土) 産経新聞関西版 朝刊社会面
 松下容疑者は、借金の返済については事前に言及しておらず、車と30万円を振り
 込んだ後に、ドナー女性の側から「返済を請求した」という情報も出てきました。


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by rabbitfootmh | 2006-10-06 23:58 | 医療/生命倫理
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