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二条河原落書

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「意欲格差(インセンティブ・ディバイド)と下流化」


内容がピッタリ一致しているとはいえないかもしれないが、日本の学校教育の問題について、いろいろな方からトラバやコメントをいただいて、改めてハタと考え込んでしまった。
で、朝日新聞の記事つながりで、「YOの戯れ言(教育中心)」にトラバさせていただきます。→ 「研究員の地区発表から感じたこと」

 ※関連記事
  「文科次官、学習指導要領で「06年度中の改訂目指す」
 「ゆとり教育」のもとになっている今の学習指導要領に代わる次期指導要領について、結城章夫・文部科学事務次官は13日の定例記者会見で、「指導要領は『言葉』と『体験』をキーワードに、早ければ06年度中に改訂する」と述べた。文科省はこれまで全面改訂のスケジュールについて07年度末までとしてきたが、教育改革の加速を望む声が強いことを踏まえて1年前倒しした。 〔アサヒコム 2006年02月13日〕
東大教授・苅谷剛彦氏が膨大な資料とデータに基づいて、緻密にまとめあげた『階層化日本と教育危機』という論文(有信堂)を、めちゃくちゃ乱暴に短く要約してみる(→ライフログ欄参照)。




日本では、社会階層が両極化し、その格差が急激に広がってきているが、それは何も最近始まったことではなく、戦前戦中からずっと存在するものであった。高度成長期の初めにおいてさえ、貧しい家庭の子どもが上の学校へ進学できないことも珍しくなかった。

その「階層格差」を、文科省と日教組は、「解消する」ための施策を取るのではなく、“被差別的立場”にある子どもたちに惨めさを(少なくとも学校という閉じられた世界の内においては)感じさせないように、その格差の実態を隠蔽するための工夫をさまざまに凝らしてきた。

その「格差」が、このままではますます格差が拡大再生産されると危惧されているが、その原因は、80年代から始まった「ゆとり教育」にあり、それまでは、「みんなががんばっているから」という共通認識の圧力が強かったために、家庭に諸事情を抱えていようと、子ども自身の学力達成度が低くとも、とにかく「勉強して良い学校へ進学することは良いことだ」という動機によって、ほとんどの子どもたちが学習に励んでいたのだが、「ゆとり教育」で学校や親から学習を強制されない状況が生まれたために、また、日教組やマスメディアが、「学歴エリート」の存在価値を貶めたり、「能力主義、実力主義」は悪であるという世論を形成したために、「良い学校」へ進学することが、なぜか後ろめたいような感覚を伴うものとされてしまったこともあって、学習に対して意欲や希望を持てない子どもたちの学習達成度(いわゆる学力)がさらに低くなってきている。

その一方で、家庭環境に恵まれた(両親の学歴や所得が高い家庭の)子どもたちは、これまでと同じように学習に対する意欲が高く、長時間の学習に励み、私塾や私立学校に通ってやがて「良い学校」「高い所得が保障される就職先」へと到達できるという。

さらに、「ゆとり教育」の施策者が予想していなかった結果として、「意欲が低い」子どもたちは、「今を享楽的に生きること」に自己満足し、人生の早い段階で自ら「成功の道から降りて」しまうようになってきたことがあるという。そのことがさらに社会階層の不平等を産んでゆく・・・という悪循環に陥っているという。

苅谷氏は、同書の最後で、『教育にできることは、階層間の不平等を拡大しないこと----できればある程度縮小すること----そして、問題の所在を広く社会に情報公開したうえで、社会が是認するかたちの、<よりましな不平等>へと導くことにとどまるのである。』として、いくつかの政策提言まで行っている。

もっと具体的な「教授方法」や「学校の役割」、「学びの意味」については、西 研氏との共著、『考えあう技術』に詳しい。

なんとも偶然なのだが、今夕の大阪・毎日放送のTV番組で、ニートを取り上げた特集があり、その中で若者たちがインタビューに答えて、「勝ち組と負け組というと、自分はずっと“引きこもり”だったし、負け組以前・・・なのかもしれない」とか「今日一日をとにかく楽しく過ごせればいいと思っている」と言っていた。苅谷氏の調査と、見事に符合する発言だろう。

こうした、日本の「教育」に関する長いスパンでとらえた“潮流”と本質的な問題点を、「現場」の教師はうまく把握できておらず、その上、文科省の方針や中教審の答申を「読み違えて」実践していることも、問題を大きくしている要因かもしれないという。

そうした大きな問題をふまえつつ、親や教師は、「目の前の子どもたち」に対して、いったい何をしてやればいいのだろうか?
とりあえずは、「がんばって勉強しなさい。基礎学力を身につけてようやく、人生のスタートラインに立てるのだから」と言い聞かせ、可能ならば、「学ぶ喜びを感じられるような環境作り」をしてやることしか、今は思い浮かばないのだが・・・。

 ※参照ブログ
 ○THE義務教育(小学校編) 「低学年の下校時間が遅くなるかもしれません」
 ○できるだけごまかさないで考えてみる 「yoさんとの「学力低下論争」その2」
 ○Mobi's Slow Life 「PISA対策に追われる学校」
 ○KOYASUamBLOG2 「学習指導要領改訂へ」
 ○お勉強しましょう 「教育実習にて」


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by rabbitfootmh | 2006-02-15 22:44 | 子育て/教育
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